エリートな貴方との軌跡
それで頬が緩んでしまう私も単純だな、と感じていたところへギューっと強い圧迫感が。
「マホー、ねえ可哀想な私を慰めてぇ」
「自分で可哀想とか言う?日本じゃアラサーだからねぇ」
「リィは静かに運転してて!大体ね、レディの年齢について言わないのは基本よ!」
「ジェンは俺のスペシャルだから良いの。ていうか、ごめんねー真帆ちゃん」
ジェンの反応を楽しんでいると容易に察しがつく声音で、くつくつと笑うチーフに苦笑。
この2人もまた自己主張の強いカップルだけれど、これだから波長が合うのだろうな…。
それから1時間ほど走り続けた車は、立派な住居の立ち並ぶ郊外の住宅街へ入っていた。
「…大神。いい加減、何処へ行くつもりか教えろ」
「修ちゃん、すこぶるうるさいよー」
「知る権利を行使したまでだ」
「黙秘は当然の権利だもんね」
「それなら自供させるまで追い詰めようか?」
「やーだー、修ちゃんサディスティックー」
「そっくりそのまま返すよ」
「そんなプレゼント要らないから、秋葉原(アキバ)で買い物して来てよ。
あ、そのついでに、真帆ちゃんとメイド喫茶でデートして来ればー?」
「…それだけは勘弁だって、前から言ってるだろうが」
10分に一度は修平がチーフと押し問答を繰り広げたけれど結局、真相が明かされない。
ここまで粘る修平も修平だけれど、…のらりくらりとかわしてしまうチーフはさすがだ。
「やだやだ男は…、さっきから論点ズレてるじゃない。2人って特にお子さまよねぇ」
「…いつもなの?」
「良いマホ?2人に勝負をさせないことはセオリーよ。
まあ、こうやって下らない事から結局は、小さな論争にも発展してるんだけど」
溜め息を吐き出したジェンといえば、けたけたと笑いながら返して来るから驚くばかり。