エリートな貴方との軌跡
そしてメンバーと騒いだ後、終日ノンアルコールを通したチーフにホテルへ送って貰う。
車のトランクには日本へ持って帰れるようにと、配慮されたプレゼントも同乗している。
“俺のガソリンは一日一回アルコール注入必須なのに”と、車中でブツブツ言うチーフ。
どうやらジェンから予め、飲酒禁止令を出されていたらしい。運転手役を遂行する為に。
「…何だかすみません、」
私の謝罪を“とんでもない”と一蹴しながら、ほろ酔い気分のジェンは強烈ハグをする。
「休肝日を作れたうえに2人の運転手役も出来て――一石二鳥じゃない」
「…帰ってから飲む。ジェン付き合ってよ」
「やーよ。私は寝る前はグランパのノンカフェイン・コーヒーがお決まりだもん」
「ほら修ちゃん、また出たよ。
ダンのコーヒー溺愛ぶりがしっかり遺伝してるよね」
「真帆もコーヒー党だから一緒だよ」
「…ん?グランパ?」
3人の会話にクスクス笑っていたのも束の間。耳慣れたフレーズの登場に目が丸くなる。
「あれ?聞いてなかったの?――コーヒー店のダンは私の祖父よ。
グランパから2人が店に来たって、夕方私にメールが入ったんだけどなぁ…」
「えええええ!」
“瞳の色も同じだしね、不本意だけど似てるって言われるわよ”と首を捻ったジェン。
「修ちゃーん、ソレはちゃんと教えてあげなよ。
真帆ちゃん、それに関して俺はノー・タッチだからね」
すかさず詰るチーフは楽しんでいるようだ。そこで私は、ジェンの顔をまじまじと見た。
確かにグリーンの瞳の色に顔も似ているとは思う。ただ、それで同定は出来ないだろう。
「…真帆ごめん。浮かれて、すっかり忘れてた」
「やだーシュウってば。デレデレも大概になさいよ」
“本当にねぇ”と、ジェンとチーフが2人で同調すれば、怖いものなしに思えてしまう。