エリートな貴方との軌跡
それに対して閉口してしまった修平の後ろ姿に、思わず可愛くて笑ってしまったのは私。
てっきり私ひとりで浮かれていた、と思っていたショッピング時間は同じ気持ちだった。
それを思わぬ産物によって知れたことで、ふわふわほろ酔い気分はまた心地良さを誘う。
彼らの陽気な声音がいつしか眠り歌となって、ベントレーの中で意識を手放していた…。
「――ん?」
「あ、起きた?」
ふわりふわり、何かが頬をくすぐる感触に苛まれる。何度も重い瞼が往復しながら開く。
「え?あ、しゅ、」
寝起きの悪さは相変わらずの私。やはり起きぬけでは“修平”とさえ上手く発せないが。
もの凄い至近距離で捉えた整った顔に、目はすぐに冴えた。ともなくキスが落とされる。
「…ん、しゅ、…いつっ」
視界に移った光景と背を預けている感触で、ここがすぐにホテルのベッドだと分かった。
ちなみに今は、隣に寝転んでいた修平が覆い被さっている。そして両頬を包む大きな手。
けれども熟睡していたらしい私は、何時の間に運ばれて来たの?それに今は何時なの…?
そんな問い掛けたちも彼の唇に塞がれ消えていく。包むのは彼の指先と瑞々しい音だけ。
口腔内を侵すような熱い舌先に応えれば、自身から漏れる声は続きをねだる音に変わる。
ひとしきりキスに酔いしれたあと、最後に彼の唇が私の唇を挟んでスッと離れていった。
口元を濡らす透明な液体をそっと拭いつつ、優しいダークグレイの眼差しを向けられる。
「いま…、何時?」
はぁはぁ、と酸素を求めながら尋ねる私を、ゴロリ横に寝転んだ彼はじーっと見ていた。
「9時」
「ええっ!」
ようやく返って来た答えに驚きのあまり、飛び跳ねるように起きたのは言うまでもない。