エリートな貴方との軌跡
少し造りの違う室内から此処は、修平が滞在している部屋だ。そしてバスローブ姿の私。
ジュニアスイート・ルームはさすがの解放感があって、いま居るベッドも大きいものだ。
運ばれて来てもなお爆睡の私を気遣い、昨夜着ていたドレスを脱がせてくれたのだろう。
いくら疲れていたからとはいえ、どれだけ眠っていたのよ?会社だって、…遅刻決定だ。
「俺が居て遅刻はないだろ?」
「…そういえば。何で?」
頭を抱えて自己嫌悪に陥っていると、そんな様子を笑いながらポンと肩を叩いたのは彼。
はた、と向き直ってダークグレイの瞳に尋ねれば、何やら楽しそうに口元を緩めている。
「とりあえず、お風呂入ろうか?」
「え、でも私、…着替えが」
“あそこ見て”と言うように指をさした先は、私のトランクがスペースを占有していた。
その近くにはドレスが飾ってあり、どうして此処へ運ばれて来たのかが未だに謎である。
「もう仕事終わったもん」
「・・・は?」
「だからぁ、終わったんだ」
目をパチクリさせる私をクスクス笑いながら、今度は指先が頬を捉えてぷにっと押した。
「早くお風呂入ろうか」
「なに、どういうコトっ!?」
眠気はすっかり覚めていても、事態が上手く呑み込めない。と、手首を彼に捉えられる。
「ほら、行こう?」
「ずるいーっ」
「真帆ちゃんのその顔見るの、楽しみだもん」
「意味分かんないっ!」
立ち上がると彼に先に行くよう促して、トランクからメイク落としや着替えを手にした。