エリートな貴方との軌跡


上気と水音がポツポツ鳴るバスルームで落ち着ける筈もなく。彼に続いて早々に出た私。



ドレッシング・エリアで保湿をしながら、ササッとメイクとヘアスタイルに取り掛かる。



ちなみに今日の洋服はミントグリーン色に、ウエスト部分にフリルがあしらわれている。



それにパフスリーブとタイトなスカートのお陰で、ラインがとにかく綺麗なデザインだ。



畏まった感じはしないけれど、どんな場所へ行ってもOKなところもチョイスした理由。



ヘアスタイルは毛先をゆるく巻き、足元はバイカラーのアンクルストラップ・パンプス。



最後に香水をひと吹きしたあとは小さめのハンドバッグを手に、ソファで待つ彼の元へ。



すでに準備を終えてソファで新聞を読んでいた彼は、私が来たと分かるとそれを畳んだ。


「お待たせ」


「いや、…可愛い。じゃあ行きますか」


瞳の色と同じダークグレイのジャケットに、ブラックのパンツを合わせたスタイルの彼。



嬉しい言葉と腕を向けられた私はもちろんギュッと掴まり、彼と一緒に部屋を退出した。



そのままペニンシュラを出ると、通勤中はあまり気に留められないビル群がそびえ立つ。


「お腹空いた?」


「うん、空いてる。食いしん坊だもん」


ハハッと笑いながら“ブランチしようか”と言う彼の案内で、向かった先はレストラン。



広くないその店内は平日の昼間にもかかわらず、賑わいをみせていてカウンターに座る。



メニュー表を見てみると、お値段もリーズナブル。そしてこのお店のウリはリブらしい。


「ここのリブ、美味いよ――大神たちとよく来てたんだ」


「本当?楽しみー」


お肉が大好きな私はそう聞いただけで俄然、お腹の減りが増してくるという単純な性格。



ここをよく知る彼にメニューのチョイスはお任せして、料理を待つ間は話に花が咲いた。



< 266 / 278 >

この作品をシェア

pagetop