エリートな貴方との軌跡
上気と水音がポツポツ鳴るバスルームで落ち着ける筈もなく。彼に続いて早々に出た私。
ドレッシング・エリアで保湿をしながら、ササッとメイクとヘアスタイルに取り掛かる。
ちなみに今日の洋服はミントグリーン色に、ウエスト部分にフリルがあしらわれている。
それにパフスリーブとタイトなスカートのお陰で、ラインがとにかく綺麗なデザインだ。
畏まった感じはしないけれど、どんな場所へ行ってもOKなところもチョイスした理由。
ヘアスタイルは毛先をゆるく巻き、足元はバイカラーのアンクルストラップ・パンプス。
最後に香水をひと吹きしたあとは小さめのハンドバッグを手に、ソファで待つ彼の元へ。
すでに準備を終えてソファで新聞を読んでいた彼は、私が来たと分かるとそれを畳んだ。
「お待たせ」
「いや、…可愛い。じゃあ行きますか」
瞳の色と同じダークグレイのジャケットに、ブラックのパンツを合わせたスタイルの彼。
嬉しい言葉と腕を向けられた私はもちろんギュッと掴まり、彼と一緒に部屋を退出した。
そのままペニンシュラを出ると、通勤中はあまり気に留められないビル群がそびえ立つ。
「お腹空いた?」
「うん、空いてる。食いしん坊だもん」
ハハッと笑いながら“ブランチしようか”と言う彼の案内で、向かった先はレストラン。
広くないその店内は平日の昼間にもかかわらず、賑わいをみせていてカウンターに座る。
メニュー表を見てみると、お値段もリーズナブル。そしてこのお店のウリはリブらしい。
「ここのリブ、美味いよ――大神たちとよく来てたんだ」
「本当?楽しみー」
お肉が大好きな私はそう聞いただけで俄然、お腹の減りが増してくるという単純な性格。
ここをよく知る彼にメニューのチョイスはお任せして、料理を待つ間は話に花が咲いた。