エリートな貴方との軌跡
向かい合って話をすることが日常、とは言えない私たち。だからこそ、今は全てが貴重。
まして此処は異国の地。知っている人はいなくて、言語も違うところに安らぎを覚える。
他愛もない話をする間も、小さなお店の中に満ちる料理の匂いに食欲をそそられていた。
「どう?」
「んー、美味しい…!お肉食べてるって感じがするー!」
「ハハッ、食いしん坊さんにも及第点頂けた」
結構なボリュームがあったのだけれど、昨夜はほぼ料理を口にすることが出来なかった。
そのため運ばれて来たリブを味わいながらパクつく私。もちろん味の良さはピカイチだ。
「ジェンも肉食らしくて。疲れるとここのリブ食べたいって、大神に強請るんだよ」
「ふふっ、ジェンも同じだね」
「美味しく食べてくれる方が、見てて気持ちいいよ」
「…太らないよう気をつけなきゃ」
“どんな真帆でも好きだけど”と言われ、頬を膨らませる私をまた修平が笑っていた…。
大満足でそのレストランをあとにして、今度は散歩もかねて付近を探索することにした。
マクドナルドの発祥地があったり、大統領が勝利演説を行った場所に立ち寄ってみたり。
またビル群から見えるミシガン湖はどこか穏やかで、修平と過ごす時間としては最高だ。
“懐かしい”と呟く彼と一緒に、時おり立ち止まってはiPhoneで写真を撮ってみたり。
マーケットを覗くか聞かれたものの、日本でもショッピングは出来るから良いと言った。
ショッピングをすれば、どうしてもひとつのお店に長く滞在してしまう時が勿体なくて。
「それなら、行きたい所があるんだけど」
「うん、連れてって」
頷いた私を一瞥したダークグレイの瞳は、すぐにタクシーを停めてある場所を指定した。