エリートな貴方との軌跡


暫くして到着した先とは、ミシガン湖に面したアメリカ最大級と言われる屋内水族館だ。



日本国内とはやはりスケールが違う。まず建物を正面から見ただけで圧倒されたほどに。



平日の昼間にもかかわらずチケット売り場は大盛況。入手するのも時間を要するだろう。


「あれ?チケットは、」


「あるから大丈夫」


「何で!?」


「どうしてかな?」


弧を描いて笑いながらチケットをくれた彼に、何はともあれ“ありがとう”を告げた私。



そうして水族館内へ足を踏み入れると、たちまち水の世界に訪れたような錯覚に陥った。



色とりどりの魚が大きな水槽の中を自由に、そして優美に泳ぐ姿は人々の心を和ませる。



きゃーきゃー騒いでみたり、あの魚や生物は何だったかな?と、どこを見ても飽きない。



日本の水族館とは施設の広さも段違い。それこそ隈なく見ていたら一日滞在出来そうだ。


「ジェン情報だけど、“オーシャナリウム”がお勧めらしいよ。行ってみる?」


「行く!」


「了解」


魚や生物に囲まれている中を彼と腕を組んで歩いていれば、ふと初デートを思い出した。


「懐かしいよねぇ。修平は覚えてる?初デートのこと」


「それを“真帆バカ”に聞くの?」


修平らしい答えが返って来たことに安堵感を覚えて、今度は腕を外して手を繋いでみた。



指と指の間を絡めての、いわゆる“恋人つなぎ”で混雑する中を進むと、過去が蘇える。



離れたくないのに、手の力を強めることが出来なくて。ただ鼓動が高鳴っていたあの頃。



それが今はもうこの手は離せない…。大きな手の感触も覚えて、すっかり馴染んでいる。



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