エリートな貴方との軌跡


そこはシックな内装とジャズの調べに包まれた、お洒落で落ち着いた日本食レストラン。



着物姿の女将に案内されたスペースは、シカゴの摩天楼を絵画観賞出来るような特等席。



ほぼ同じ高さのビルもあれば、このビルより低いビルもあって、輝き方がまるで違った。



カップルシートとなっているそこへ隣り合って座ると、テーブルには食前酒が運ばれる。


「あんなに飲んだのにね」


「真帆ちゃんは酒豪だろ?」


「“元”酒豪なんですー。今はちょっと、」


ふふっと笑ってほどよく冷えたグラスを近づけると、グラスはコツンと鈍い音が鳴った。



小さな透明のグラスの中身は大好きな冷えた日本酒で、喉を通る感覚がやっぱり好きだ。



これは少し甘口ね、などと一口飲んで分かるのは、私の父が日本酒一辺倒であるためと。


「やっぱり日本酒が一番、」


隣で小さなグラスを簡単に空けてしまった彼が、日本酒愛好家であることが大きな理由。


「んー、これも美味しい!」


一緒に出されたお通しがまた美味しくて、このお店への期待度がさらに高まっていく私。



箸を持った彼がそれに手をつけると、“うん、美味い”とそれをすぐに平らげてしまう。



そして日本酒の小ボトルを改めてオーダーした。どうやら今日は彼が“飲む日”らしい。



日々の忙しさゆえ摂生している彼は酒量を決めて、ある程度で留めた飲み方をしている。



昨日のパーティーでももちろん飲んでいたけれど、自らにストップを掛けていたと思う。


「たまには酔いつぶれてみる?」

「私、修平は運べないからね?」


「その前に真帆ちゃんが酔って爆睡だよ」

「たまには良いでしょう!?」


運ばれて来た小ボトルの日本酒を持って、彼のグラスへ注ぎつつまた小さな小競り合い。



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