エリートな貴方との軌跡


駐車場に向かう道程は、西高東低の冬型らしい気候を肌で感じずにはいられない。



夜も明けて間もない時候で、キーンと頬も痛くなるくらいの寒風が掠めていく。



たとえコートを着ていても、首元から外気が侵入するから寒くて仕方なくて。



元来冷え性の私だから、この時期の出勤は堪えてしまうのだ・・・




「寒い・・・」


あまりの寒さで震える身体を言い訳に、チョッとだけ彼に寄り添ってしまえば。



「今日は一段と冷え込んでるし、冷え性には辛いよな」


そう優しく受け入れてくれる修平に、心だけはホッと温かくなっていく…。




「うん…、今日はポトフかなー」


温かいから連想して発した言葉は、今日の夕御飯のメニューの事で。



「ハハッ――!

朝からもう夕食の事を考えるとは…、さすが食いしん坊!」


「いいの、ご飯が一番の楽しみだもん!」


毎度のコトとは言え、何が彼の笑いを誘うのかは未だに分からないけど。




「確かに…、今日も楽しみしてるよ」


「うん、たくさん作るからね」


「真帆ちゃんの“たくさん”は、少しばかり量が多いケド?」


「スープはたくさん作った方が美味しいの!」


熱々のポトフを想像して笑顔を返せば、ソレもまた彼の笑いの材料らしい。




こんな小さな約束ゴトは日々の楽しみで、毎日続いく事が嬉しさを齎すの・・・




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