エリートな貴方との軌跡
駐車場に停車するレクサス車の助手席を、今日もガチャリと開けてくれて。
何処までも優しい彼に、ニッコリ笑顔を向けてシートへと腰を下ろす私。
バタンと高級車らしいドアの音で修平が乗り込むと、静かに車は動き始めた・・・
「そうだ…、今日の昼は松岡に見張らせようか――
“妹が実践する、昼メシ抜きのやり方をどう思う?”って…」
エアコン特有の噴射風にホッとしていると、運転席からイジワルな言葉が聞こえた。
「えっ…ダメだよ、今日は食べるから…!
松岡さん煩いんだもん、絶対に言わないでー!」
ボーっとしながら組み立てた今日のスケジュールすら、忘れてしまいそうな私。
松岡さんにランチ抜きがバレると、いつも食事に連れ出される事になるからだ。
優しい気遣いには感謝でも…、その量が半端ではないから困りもの。
今までの光景を想像するだけで自然と、ブンブン頭を振ってしまうほど…。
「シスコンの兄を持つと大変だなぁ…。
今日のランチは、コッテリ中華で頼んでおくか――」
ウンウンと、小さく首を振りながら呟いた彼の言葉で目を見開かせると。
「ヒドイ!アノ人加減を知らないのに…!
大事な会議があるのに、動けなくなるでしょう!?」
「フッ…、妹に“アノ人”呼ばわりされてるし――
シスコン松岡が聞いたら、悲しむかもなぁ…」
「修平さんのイジワルー!」
力ない反撃など届く訳もなく、ククッと面白がって笑う彼の横顔に頬を膨らませた。