エリートな貴方との軌跡
だけれど心配からの提案だと分かっている分、膨らんだ頬はすぐに萎んでしまう。
悪いのは私であって、心配をしてくれるが故の言葉だから・・・
「今日から絶対に食べるから…、お願い…ね?」
松岡さんに報告されるのは決まっていても、少しはオブラートに包んで欲しい。
困りかねながらも、口元を緩めて運転を続ける彼の横顔に少しの願いを請った。
「まったく・・・
天然由来の小悪魔には敵わないな…」
「天然でも小悪魔でもないもん!」
「流石の松岡も肩ナシな訳だ・・・
ま、俺はすっかり“真帆バカ”だけど――?」
「ッ・・・」
そのまま信号停止した車のギアを変えると、首だけを動かして苦笑を浮かべる彼。
妖しい顔つきで見つめられれば、もう何も言えなくなるのが惚れた弱みで。
一頻り笑ったあとの車内の空気は、今日一日のエネルギーになるの・・・
「おはようございます」
修平とは駐車場で別れると、急いで未だ静かな試作部へと足を進めた私。
「おはよ…、どうやら昨夜は“よーく寝た”ようで?」
「ち、違いますよ――!」
「隠してもムダムダ・・・
あとで、黒岩さんの顔も拝見して来るかな――」
ニヤニヤ笑うスマイルキラーをスルーしつつ、デスクのPC電源をONにした・・・