エリートな貴方との軌跡
ふわふわと浮遊しそうな私を、力強くギュッと抱き締めてくれるから。
眼前に捉えたシルバーのネクタイにホッとして、束の間の安らぎを感じるの…。
「もう…、大丈夫――」
「そう?」
彼の胸へとそっと手を置けば、ヒトトキの休息に終わりを告げてしまう。
「…先ほどの件は、松岡さんを通じて提出いたしますね」
「あぁ、頼むよ」
「かしこまりました…」
そんなコドモ染みた寂しさを隠すために、急いで言葉を付け足した。
そう…、今は明日のWEB会議のプレゼンに備えた準備中の時であって。
たとえ時間外勤務帯だとしても、試作部には時間枠があって無いようなモノ。
バタバタと慌しい部署に、早く戻らなきゃいけないから・・・
「それでは、失礼いたします…」
一礼をして彼の許から離れようとしたのに、本当にダメかもしれない…。
頭を上げた先で捉えたダークグレイの瞳に、なけなしの自制心が薄れるのよ。
未だに高鳴り続ける鼓動と口内に残る余韻が、再び熱を帯びて・・・