エリートな貴方との軌跡


ふわふわと浮遊しそうな私を、力強くギュッと抱き締めてくれるから。



眼前に捉えたシルバーのネクタイにホッとして、束の間の安らぎを感じるの…。




「もう…、大丈夫――」


「そう?」


彼の胸へとそっと手を置けば、ヒトトキの休息に終わりを告げてしまう。




「…先ほどの件は、松岡さんを通じて提出いたしますね」


「あぁ、頼むよ」


「かしこまりました…」


そんなコドモ染みた寂しさを隠すために、急いで言葉を付け足した。




そう…、今は明日のWEB会議のプレゼンに備えた準備中の時であって。



たとえ時間外勤務帯だとしても、試作部には時間枠があって無いようなモノ。



バタバタと慌しい部署に、早く戻らなきゃいけないから・・・




「それでは、失礼いたします…」


一礼をして彼の許から離れようとしたのに、本当にダメかもしれない…。




頭を上げた先で捉えたダークグレイの瞳に、なけなしの自制心が薄れるのよ。




未だに高鳴り続ける鼓動と口内に残る余韻が、再び熱を帯びて・・・




< 4 / 278 >

この作品をシェア

pagetop