エリートな貴方との軌跡


言い返そうにもご尤もな考えのチーフには、反論の余地など見つからず。



ハイテンションながら淡々と話す彼に、既に呑み込まれていたのにね・・・




『真帆ちゃん、ダメでしょー。

そうやって直ぐに謝るのは、日本人の悪いクセだよ?』


クスクス笑って話す彼に、再びグッと言葉に詰まらされてしまう。



『…そう、ですね』


これでも幼少を海外で過ごしていた為、彼の意見に甚く納得させられていれば。




『…たしかに、修ちゃんと一緒にいるとさぁ。

“日本人的感覚”が研ぎ澄まされるよねぇ?

だけど彼って、ホントはコッチの人間なのにさー』


『・・・っ』


其処でいきなり、ズバリと修平の名前を挙げて話題を変えてしまうから。



何を考えているか分からないチーフが、途端に怖い人に思えてしまった・・・




『だから修ちゃん、帰したく無かったのになー』


『・・・・・』


バタバタした部内の騒音で、このフレーズを掻き消してくれたら良かったのに。



冷たさと生易しさを兼ね備えた、巧みな話術と空気に取り込まれてしまったの…。





『ストレートに言うのもアリだけどさー。

頭の良い真帆ちゃんなら、もう解ってるよねぇ?』



幾許かの間のあとで放たれたお尋ねが、未だ燻ぶっているほどに・・・




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