エリートな貴方との軌跡
頭が良い人の発言は、やはり何かを秘めているのだと学んだと同時に。
まず大神チーフについて何も知らない時点で、先ずは話にもならないけれど。
こうしてスラスラと話せたのは、話題の修平が不在だからだ…――
『悪い、先に失礼する…!』
チーフとの談義中に現れた秘書さんに促され、取締役会へと向かって行った彼。
颯爽と走り去る後姿を見送りながらも、本当聞けたら良かったのに・・・
「あくまで確認だけど・・・
この話って、黒岩さんに言ってないよな?」
頷くと不安からスカートまで握り締めるほど、ギュッと拳を作ってしまう私。
「ていうか…、敢えて“聞けない”ように仕向けてるし。
巧妙さには感服だなぁ、コワイコワイ…」
今度はテーブル上に肩肘を置いて頬杖をつき、こちらを窺う松岡さん。
「…本当です…、結婚するのに…!」
心配そうに眺める彼の表情に絆されて、急に吹っ切れてしまった私。
彼のプレスに押し黙って、揺すぶられて泣いた自分を情けなく思えるほど…。
「フッ…、やっぱり妹は負けん気が強くなきゃな?
問題はあのペテン師を、どう料理するかだなぁ」
ヨイショ上手なスマイルキラーの言葉に、ようやく笑う事が出来た私。
すると何かを企んでいるのか、ニヤリとほくそ笑む彼に首を捻らされた・・・