エリートな貴方との軌跡
試作部内にあるミーティングルームより、はるかに広いA会議室。
だから席は幾らでもあるのに、何故かこちらへと歩み進めてくる修平。
チラチラと窺うのも気まずくて、視線を落としてテーブルを眺めていた…。
「その態度はどういう意味?」
うっすら眼前が暗がりになった事、そしてふわりと漂う爽やかな彼の香り…。
これらはすべて、不機嫌な声色の修平が私の背後に回った事を物語っている。
「っ…、何がです?」
込み上げてくる何かを堪えれば、震えそうな声が出てしまう不自由さ。
「眼を合わせないし、他人行儀だから」
「別にっ…、何にも無い!」
「どうして、俺には何も言わない?」
いつものように諭すのではなく、寧ろ後ろから追い立てるように尋ねてきて。
その背後から両腕が伸びてきた瞬間、バンッと両手をテーブルへ叩き置かれる。
「な、んで…、怒ってるの…?」
滅多に怒らない彼の所作に慄いて、震えとともに限界にきた涙が零れ落ちていく…。
ソレから幾許かの沈黙のあと両腕が退き、そのままギュッと背後から身を包まれて。
「真帆…、そんなに信用出来ないか――?」
「っ、な、んで…」
不安の色を覗かせた低音ボイスが響き、頬を伝うモノがさらに溢れ出た・・・