エリートな貴方との軌跡
秘書課のリーダーを務める絵美さんは、入社間もない頃の私がお世話になった先輩で。
修平や松岡さんと同じく、T大卒の肩書を持つバリキャリな美人なのだけれど…。
「もうっ、本気で許せないんだけど…!」
「何がですか?」
変わらずギューっと私を抱きしめたまま、いつもよりドスの利いた声色の彼女。
突然に現れた挙句、怒りドコロがまったく見えなくて首を傾げて尋ねると。
その瞬間に力が弱まったと思えば、肩に置かれた彼女の手で引き離された…。
「もー真帆ちゃん、何言ってんの?
アノ本社のウザ男よ!修平なんか役立たずのクセに!」
「えっ、絵美さん…それは!」
「ん、またウザ男に何か言われたの!?」
本社イチと目される、エリートの大神さんを“ウザ男”呼ばわりする絵美さん。
彼女らしいのだけれど…、ソコにイチイチ構っていられる状況ではないのよ。
「真帆…、その話“初めから”聞かせて貰おうか――」
絵美さんの後方からビシバシ感じる、鋭いダークグレイの瞳から背きたい…。
「真帆ちゃん、もしかして黒岩さんに…」
「えっ、うそ!?」
「っ…、そ、の…」
エリート三者から向けられる眼差しに、困り果てるのも仕方ないでしょう…?