エリートな貴方との軌跡


相変わらず、淡々とした口調の修平と激情タイプの絵美さんとのやり取りが続く…。




「この件に関して、心配は無用ですよ。

真帆が“すべて”話してくれるみたいだし――…

それに秘書課の長が不在ともなれば、役員が困りますからね?」


「ッ――!」


窺うようにそっと見上げれば、こちらに涼やかな笑みを見せる彼と眼が合った。



不意打ちすぎる黒い笑顔にまで、ドキリとさせられる自分が情けないよ…。




「そーだなぁ、長老は早く戻った方が…」


この狭間でも“不用意な”発言をする松岡さんは、絶対に場を楽しんでいると思う。



「るっさい、哲…!

ついでに修平、アンタこそ役員のクセして!

“Time is money”が常套句の本社なんて、クソくらえよ――

あー、本気でムカつく…!」


感情の赴くままが信条の絵美さんだけれど、此処まで怒りを露わにするのも珍しい。



というより、仕事は仕事!という割り切ったスタンスを持っている人なのに。




「ていうか…――

オネエさまとチーフって、前に何かあったワケ?」


「…話せば長いけど、ソレなりにムカついてんのよ!

あんなヤツ…、この場にいれば蹴り倒してやるのに」


込み上げる怒りを露わにしているのに、素知らぬ顔で返す松岡さんは凄い。



肝心な問題はさておき、この2人のナチュラルな関係が羨ましくなってしまう…。




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