エリートな貴方との軌跡
松岡さんが手を振る姿を捉えながら、バタンッと音を立てて閉まった会議室のドア。
そんな私には肩への心地良い重みと爽やかな香りが、圧し掛けられた状態で。
この重みというか重圧を…、どうすれば良いのよ――!
「しゅ…じゃなくて。あのですね…部長?
“場所が場所”だと思いますし、その…」
フロアに一歩出てしまえば、もう其処は戦場と化した試作部と目と鼻の先。
気まずさゆえにぎこちない笑顔で、チラっと一瞥するように上方の彼に請えば。
「吉川さんは体調が悪いんだし、気にする必要ない――」
「なっ…、ちが…!」
「ほら、カッカするとまた貧血起こすよ?」
「っ――!」
サラッと言いのける彼には、この状況を気にする素振りもゼロらしい。
そんな態度に立場も忘れてムッとした私は、自然と頬も膨らんでしまうのに…。
「…キッチリ説明するなら離すけど、どうする?」
こうして反論すら出来ない中で、その瞳と笑顔で条件を持ち掛けられれば。
「・・・ずるい…、です」
悔し紛れにそう呟きつつ、肯定の意味でコクンと頷いてしまう私も私だよ。
「じゃあ、またあとで…」
フッと綺麗に一笑して、ようやく肩を引き寄せていた腕を離してくれた修平。
コツ、コツと、革靴音を立て立ち去る彼のせいで、鼓動の制御はもう利かない…。