エリートな貴方との軌跡
すべてをお見通しだった修平は…、“私の言葉”を待っていたのに――…
玄関先での突然のキスに驚かされたせいで、目を閉じる事さえ出来ずにいれば。
ふわりと鼻腔を掠める爽やかな香りと、目を伏せた彼の色香にドキリとさせられた…。
「ちょ、ンッ…、ふっ…」
グッと性急に押しつけられた半ば強引な口づけに、到底ストップなんて掛けられず。
容易く舌を絡め取られてしまった私からは、力ないくぐもった声が漏れ出すだけだ。
「っ…、んん…」
何時もの優しさはドコ吹く風…、激しさが修平の心情を物語っているように思えた。
必死に受け入れれば今度は息苦しさを覚えて、ポーっとし始めた脳内と熱い口内…。
縋れるモノを辿れば、当然のように眼前のダークグレイのスーツを視界に捉えた。
何時しか虚ろな視線に変わっていた私は、必死にソレへと目指して手を伸ばすと。
力の限りにキュッと握りしめようとした刹那、キスの往来が消えて行く…。
「はぁ…はぁ…っ、えっ!?」
あまりの激しさに酸素欠乏状態だったせいか、肩を揺らせて息をしていれば。
無言を貫く彼に抗う気力ゼロの身体は掬われて、容易に宙を舞ってしまう。
貪るようなキスを瞬時に終わらせた挙句、サッと抱え上げてしまうのだから。
その芸当ともいえる素早さに驚かされたせいで、上手く言葉を見つけられ無い…。