お前は俺を好きになる~気になる女の子~
結局その後「カバンを持つ」だの「やっぱり一緒行く」だの一人ダダをこね続けた留美だが、俺が卑屈な顔をして一芝居うった「マジ勘弁…」のセリフにまんまと騙され、帰り道の途中で寂しげに手を振り、諦め気味にバイバイをしてきた。



やっぱちょっと可哀想かななんて思ったりもしたが「鬼になる瞬間も人間、必要だろ」なんて自分に都合のいい解釈で俺は己に言い聞かせたりもしてみた。



邪魔者が消え去った今、俺の隣には間違いなくいたずらっ子の真由がいる。



家に向かい歩く二人の間には妙に空間があって、不自然な気もするが、それすら嬉しいのも事実だ。



留美抜きでの二人っきりのデートなんて初も初だから、高鳴る胸はバクバクで、興奮のあまり昼に食ったもんがリバースすんじゃねえかとさりげ心配だったりもする。



「留美に嘘ついちゃったね。うちらひどい奴かも」



「ああぁ、んんっ…」



するりと話しかけてきた真由に、俺がうまく返事を返す事が出来ずにいると



「でも、たまには二人もいいでしょ」



なんて小悪魔っぽい言いっぷりで、真由は二転三転してきた。



そんなSっ気たっぷりな真由も嫌いじゃなかったりする俺は、完璧な末期患者だ…


このままずっと心地よさに浸かり黙っていたい気もしたが、真由からしたら沈黙はなんか変だと思うだろうから、俺はとりあえず会話を続けた。



「留美抜きなんて初めてだかんな。うるさいのがいねえのもありだな、あり」



「ぷっ。ウケる。つか、ありありくどいし」



「そんくらい留美がうざいって事。真由と二人になりたいと思ってもさ」



「えっ?」



「あっ、いや、なんでもない…」



つい感情が先走り、口が滑っちまった俺。



うかつにも本音がポロリと出てしまった。




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