お前は俺を好きになる~気になる女の子~
「あっ、じゃ、好意に甘えて話すね…」



「うん」



「あたし聖にも留美にも話してなかったけど、じつは彼氏がいるの。でね彼が最近冷たいっていうか、あたしに興味がないって言うか体も求めてこないの。他に好きな子出来たのかなとか、あたしが嫌いになっちゃったのかなとか考えちゃってさ。聖は美人だしモテるから恋愛経験豊富だろうと思って彼とうまくいく方法を聞いてみたかったの」



「彼…彼氏…」



全てが止まった。



自分から話題を振っといて、階段から激しく足を踏み外してしまった俺は「聞かなきゃよかった」と思ってる。



心の準備なんてあってない。



それに恋愛経験なんて豊富どころかゼロもゼロ。



ふざけんなってくらいショックがデカすぎて、なんかわけがわかんなくなりそうだ。



確かに真由は可愛いけど、出逢ってから不振な動きを見せなかった真由に彼氏がいるなんて予想外もいいとこ。



それも知らぬうち二人は互いを求めあい、抱かれていた挙げ句、まだ彼女は彼氏に抱かれたいと望んでる。



気のせいなのか、目の前にいる真由が霞んで、歪んで見える…



「ちょっ、涙目だよ?」



真由がこのタイミングで声を出さなければ、涙って奴が危うくこぼれ落ちるとこだった。



はち切れんばかりの悔しさと嫉妬心。



そいつがググッと込み上げ、息を吸うのを忘れ、呼吸が出来なくなりそうだった。



こらえなきゃ。



平然をよそわなきゃ…



「目…痒いんだよ。あたしアレルギー持ちだからさ…大丈夫大丈夫。放置しときゃ治るって」



「本当?なんか今日の聖いつもと違う。なんか変だよ?」



「変ってだいぶ失礼だな。人間なんだからアレルギーくらいあったっておかしかねぇだろ。痒いもんは痒い。仕方ねぇじゃん」



「そうじゃなくて」



「あ~ぁっ。痒ぃぃい。目薬目薬」



テーブルの上に雑に置かれたコンタクト専用の目薬を手に、液を一滴流し込む。
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