お前は俺を好きになる~気になる女の子~
乾き予防の薬でも、コンタクトをしてない真由からしたらちゃんとした薬に見えたらしく、俺を疑いもしない。



黙って俺を見てる。



ごまかせてる。



大丈夫。



なんのミスもおかしちゃいない。



いや、そう無理にでも思考を結び付けなきゃ俺が壊れてしまう。



ここにたどり着くまでの間に思い描いていた理想ははかなく散り、一気に力が抜けきってしまった俺。



雑にベッドへ腰掛けると、床に置いてある市松模様のクッションに真由も腰掛け、俺達は向かい合う形になった。



不自然な流れに漂うチクハグ感に、飲まれてはいられない。



俺に残された道は潤いを失った口を開き、真由に言いたくもない話題をふるしかない。



「で、彼氏とどうしたいの?そいつの事、好きなんだろ?」



「うん…凄く好き…どうしても失いたくない」



「凄く好きか…じゃ自分の口で気持ちを言わなきゃ彼氏に伝わんないじゃん。一人グダグダ考えて答えなんかでる?」



「わかってる。言わなきゃ始まらないのもわかってる。でも秀(ひで)ちゃんやたら聖の事も聞いてくるし、なんかあやしいっていうか何て言うか、変なの…」



「えっ?秀ちゃん?ってかそこでなんであたしが出てくるわけ?」



秀ちゃんって名を何度か真由から聞いた記憶がある。



女と勘違いして話しを聞いて流してたが、そいつが彼氏だったとは…



うかつだった。



確かA組に秀なんとかはいたような…



「秀ちゃんわからない?A組の斎藤秀明(さいとうひであき)。彼氏ってその人。で、秀ちゃん聖ちゃんは彼氏いるのとか美人だよねとかお前友達だよなってあまりに言うもんだからついキレちゃったんだよね。そしたら避けられだしてさ…ねぇ聖。あたしが悪いの?あたしが変なの?」



「変もなにも」



「ヤキモチ妬いちゃいけない?疑ったのは悪いけど好きな人が気になるのは当たり前なんじゃないの?」
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