私が副担任を振り向かせるまで
仕方なくアタシは
担任に遅刻の事で
怒られる覚悟を決め彼に近寄った。

「あの…色々と大丈夫ですか? その…眼鏡とか;」

と,彼に話しかけると
彼は割れた眼鏡を持って,気が何処か遠くに居た様子だったので叩くとハッ!!として言った。

「だだッ…大丈夫です!
眼鏡は,どうにかなります。 今日は,もう割れたままですが…」

とヘラ笑いをした。
困った様に。
今度は逆光でも
何でもなくてハッキリとアタシに向けた笑顔だった。

アタシは,その素顔に
その笑顔にKO負けした。
完全に惚れてしまった。
誰かも判らない天然馬鹿なこの人に。
ヤバイ…
貴方はアタシの理想通りです!!!

「本鈴鳴っちゃったね。
ごめんね。 手間かかせちゃって。 怪我は大丈夫??
保健室行く??」

と彼は割れた眼鏡を
かけながらアタシに話しかけた。
アタシは即座に

「イヤ!! 大丈夫!
大丈夫です!! ところで…な,名前は??」

と名前を聞き出した。
そしたら,クラス聞いて回れるからね。

「名前!? …松山。
松山悠人です。」

と笑った。
今度は困った様じゃなかった。 …と思う。

「あッ。 アタシは…」

と言いかけると
彼は右の腕時計を見て
焦った様に言った。

「もう,こんな時間だ;
眼鏡,見つけてくれて
有難うね。」

と足早に去って行った。

彼は何なんだろう。
クラスも知らないし,
学年も知らないし,
てか,あんな人居たっけ?!

知っているのは
「松山悠人」と言う名前と
割れた眼鏡をかけて
天然馬鹿な事だけ。

彼を知りたい。
これは…秒殺な恋。
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