理想と現実の間に
目の前には、コタツに入りビールを飲みながら
テレビと新聞に交互に視線を向ける父の姿。
仕事から帰ってきての唯一の楽しみなのだろう。
12月ということもあって、田舎暮らしにはもう十分コタツの時期だ。
雪が降る気配はまだないが、
昼と夜の温度差が激しく風邪がはやり始めている。
父の角隣りには歳の離れた妹(まひろ)
もう10歳だというのに一人で寝れず、ベッドに連れて行かれるまでの間コタツで寝ている。
相変わらずスゴい寝相…
さらに角隣り、酔っ払ったりでもしない限り口数の極端に少ない父とは反対に
ペラペラと次から次へと言葉巧みに口を動かす母がいる。
かなりお笑い好きの母で、
お笑いチャンネルがあればボリュームを上げて両手を床に着き、
前のめりになってテレビ画面にかじりつく
きっと家族以外想像できないであろう母の姿だ!
なぜなら、外に出る時は必ず
バッチリのヘアメイクで服もビシッと決めてくる。
いわゆるキャリアウーマンといった感じだ。
あと一匹、弟が存在するが
彼女との電話に忙しいらしく部屋から出てこない。
高校三年生の弟は進学校に通っていて、
小学生からやっていた野球を最近引退した。
寂しい気持ちもあるらしいが、ずっと坊主だった髪をやっと伸ばせると喜んでいる。
計、家族5人
俗に言う“アットホームな家庭”というやつだと思う。―――――――――――