涙恋 ルイコイ
1章 高校生活
「1192つくろう鎌倉幕府…。1192…。」
朝の満員電車の中、
教科書を片手に何度も繰り返し呟く。
「なあ杏、恥ずかしいから止めろって。」
そんなあたしを見て、
幼なじみの直人が大きな溜息を付いた。
「止めない!
赤点取ったら補習だよ!?
それだけは絶っっ対嫌!」
一旦顔を上げて直人にそう告げた後、また教科書の文字を目で追う。
―宮内 杏―(17)
大嫌いなのは勉強。
大好きなのはお洒落をすること。
どんなに急いでいる時でも、
身だしなみだけはきっちりするようにしている。
そんなあたしは、髪を巻くのに時間を掛けすぎたせいで、勉強に全く手が回っていない。
「本当ヤバい…。」
今日はテスト当日なのに…。
「お前、もっと早くから勉強しとけよなあ…。」
そうぼやきながらも、
側に立って荷物を持ってくれる直人。