大好きなんです。



「…ゴメン。正直めぐちゃんの事、そういう対象で見てなかった。」



…涙をこらえた。
幸せな気持ちが黒く深く消えていく…


『…ううん。ゴメン…困らせて。思わずゆっちゃったけど……
でもめぐの気持ちに嘘はないよ。』



「うん…


…泣かんといてや。」



見破られた気がして…
思わず顔を隠す。



『…泣いてないもん!!きょうちゃん帰ろ。明日お仕事やろ??』


「…せやな。帰ろっか。」




帰りの車の中、あたしは寝たフリをしながらコソコソきょうちゃんの横顔を黙って見ていた。


何度も何度も…
鼻の奥がツンとなる。



泣いちゃいけない。
涙は女の武器だから…

そんな武器使いたくない。



ふと…


たいゃんと付き合えた時の光景を頭がよぎる。
泣きじゃくったあたしをぎゅっと抱きしめてくれた。


あたしの泣き顔を見たのはたいちゃんだけ。


あの、幸せな時間を思い出すとまた…
泣けてきた。



恋って不思議だなぁ…

あんなにあんなに好きだった人がいて、

もう一生この人しか好きにならないだろうって何度も思っても、


あたしは今、
違う横顔に恋してる。



けどきょうちゃん。

あたし、なんだろう。
たいちゃんよりも
もうずっとずっと大好きだって、

自然に胸はって
心から素直に
言えるよ。



どこが好き??って聞かれたら、
きょうちゃんの事まだまだ知らないけど…

ハッキリとは答えられないけど…


落ち着くの。
隣にいると
なんだかホッと
安心しちゃうの。


クールに見えてホントは
すごく優しい人なんだと思う。


胸が痛い。
痛くてせつない19歳の夏の終わり。
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