黒い同居人
「あ゛ーーー嫌だ嫌だ嫌だ。なんであたしってこんなすぐイライラすんの?…病気?」
イライラは不運を引き込むのか、いつも使う市営バスが普段より30分近く遅れた。
「あ~あいっそのこと病気にでもなって仕事辞めたいよぉぉ~」
30分近く遅れた上に途中で事故があったか何かで交通整理が行われていた。
ノロノロと進むバスは普段より更に帰宅時間を遅らせた。
「…とにかく早く寝る。すぐ寝る。決めた。今日は絶対早く寝る。」
ブツブツ呟きながら、部屋のドアを開ける。
瞬間、熱の籠った部屋独特のどんよりした空気がのぞみを襲う。
「う゛ごぉッ!なんじゃこりゃ!部屋!熱ッ!そんでなんか空気悪ッ!」
玄関に散乱した靴を踏み越えて廊下の電気を付ける。
パチッという音と共にどんよりとした部屋とは対照的に明るいクリーム色の灯りが部屋を照らしだした。
―――瞬間。
のぞみの視界の隅に¨何か¨がチラッと姿を掠めた。
「…?」
キッチンと部屋(居間)を繋ぐドアの右斜め上。
気のせいでなければそこから¨何か¨の姿が見えた。…気がした。
「…………。」
のぞみは嫌な予感を隠しきれなかった。
「…いや、確かに今の時期は出るって言うけど。あたし、そんなんじゃないし。うん…。今までそんなんなかったし。…うん…。絶対ナイ。ナイナイナイ…!」
半ば呪文のように呟きながらドアに向かって歩く。
視線はドアの右斜め上に集中したまま。
やっとのことでドアノブに手をかけると、最後にもう一度、辺りを見渡す。特にドア上部と天井付近を重点的に。
…よかった。見間違いだ。
ホッと小さく息を吐くと、視線を外す。
早くこのドアを開けて中のベッドに倒れ込みたかった。
何気なく視線をドアに向けた瞬間。
「―――……!!!!!!」
のぞみは危うくベッドどころか後ろに転がる巨大ゴミ袋タワーにダイブするところだった。
―――……黒い¨何か¨もとい¨アイツ¨は何食わぬ顔でそこに¨居た¨。
閑静な住宅街に佇む何の変哲もないワンルームアパート。
誰もが寝静まる深夜、おおよそうら若き女性が出すとは思えない野太い声の断末魔が響き渡った…―――
プロローグ―終―
イライラは不運を引き込むのか、いつも使う市営バスが普段より30分近く遅れた。
「あ~あいっそのこと病気にでもなって仕事辞めたいよぉぉ~」
30分近く遅れた上に途中で事故があったか何かで交通整理が行われていた。
ノロノロと進むバスは普段より更に帰宅時間を遅らせた。
「…とにかく早く寝る。すぐ寝る。決めた。今日は絶対早く寝る。」
ブツブツ呟きながら、部屋のドアを開ける。
瞬間、熱の籠った部屋独特のどんよりした空気がのぞみを襲う。
「う゛ごぉッ!なんじゃこりゃ!部屋!熱ッ!そんでなんか空気悪ッ!」
玄関に散乱した靴を踏み越えて廊下の電気を付ける。
パチッという音と共にどんよりとした部屋とは対照的に明るいクリーム色の灯りが部屋を照らしだした。
―――瞬間。
のぞみの視界の隅に¨何か¨がチラッと姿を掠めた。
「…?」
キッチンと部屋(居間)を繋ぐドアの右斜め上。
気のせいでなければそこから¨何か¨の姿が見えた。…気がした。
「…………。」
のぞみは嫌な予感を隠しきれなかった。
「…いや、確かに今の時期は出るって言うけど。あたし、そんなんじゃないし。うん…。今までそんなんなかったし。…うん…。絶対ナイ。ナイナイナイ…!」
半ば呪文のように呟きながらドアに向かって歩く。
視線はドアの右斜め上に集中したまま。
やっとのことでドアノブに手をかけると、最後にもう一度、辺りを見渡す。特にドア上部と天井付近を重点的に。
…よかった。見間違いだ。
ホッと小さく息を吐くと、視線を外す。
早くこのドアを開けて中のベッドに倒れ込みたかった。
何気なく視線をドアに向けた瞬間。
「―――……!!!!!!」
のぞみは危うくベッドどころか後ろに転がる巨大ゴミ袋タワーにダイブするところだった。
―――……黒い¨何か¨もとい¨アイツ¨は何食わぬ顔でそこに¨居た¨。
閑静な住宅街に佇む何の変哲もないワンルームアパート。
誰もが寝静まる深夜、おおよそうら若き女性が出すとは思えない野太い声の断末魔が響き渡った…―――
プロローグ―終―