Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―



気が利く本城さんに感謝、だ。




「……あの、お兄様のお知り合いの方ですか?」





……忘れてた。



やってきた本城さんに完全に意識を向けていて、帰ろうとしていたレイコさんを。



割って入ってきた声に、皮を剥いて欠片を口に放り込んだ状態で顔を上げれば、


レイコさんが本城さんを見ていて。




誰だ、と顔に書かれている。




「違う。俺の知り合いです。本城さん、俺の会社の上司のレイコさん」



俺が簡単に紹介すると、「本城です」と小さな声で挨拶し頭を下げた本城さん。



レイコさんは声を発すること無く黙って頭を下げた。



「城戸くんの上司で同じ企画を担当していたの」


「じゃあ……あなたが……?」




……レイコさんが詳しく説明した時。


本城さんが、ピクッと反応して、表情が曇った。




最後の方を濁した本城さん。



それでも視線は真っ直ぐレイコさんから逸らすことなく向けられていて。



良く分からないけれど、あまり良い雰囲気じゃないのは確かだった。






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