Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―



カタカタ……



出来るだけタイピングの音も気にしながら資料を打ち終えて


ふーっと息を吐きながら背中を伸ばす。




終わった。



出来上がった資料を遠目に見ながら確認する。



ふと、右下を見れば、未だぐっすりと寝ている本城さん。



よっぽど疲れてたんだな。



少し動いたのか髪の毛が顔にかかっていて、見えない。




……サラサラ。


手を伸ばして絡めればスッ、と落ちていく。



顔が見えるように掻き分けてみたり。



……何やってんだろ、俺。




今ここで本城さんが目を覚ましたら俺、完全に気持ち悪い人じゃん。




すぐに本城さんから手を放す。




沢山話がしたいって思ってたんだけど……こういうのも悪くない。


しばらく、何の変化も無い本城さんの表情を眺めて、暇を持て余す為にソリティアを開いた。





――――――――――――

――――――――




「んっ……」


「おはよ。起きた?」



クリックの音しかしなかった部屋に、本城さんの声が漏れて、



画面に向けていた視線を本城さんに向ければ閉じられた目がゆっくりと開いた。






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