Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
何を考えているのか分からない。
ただ、俺のさす部分を見つめていた本城さんは、俺の問い掛けにどこかにやっていた思考を取り戻したみたい。
ハッとした本城さんは、ニッコリ微笑んで俺を見る。
「……思い出して」
一言。
たった一言呟くように静かに落とされた言葉。
やっぱり、教えてくれない、か。
兄貴もそう。本城さんもそう。
俺に思い出して貰いたいから、思い出させたいから答えを教えてくれない。
分かってるけど、2人は知ってるのに俺だけ分からないのが悔しくて。
なら思い出せって思うけれど脳は思い出してくれなくて。
少し答えを教えてくれればそれをきっかけに思い出せるかもしれないのに。
そうやっていらついたりもする。
……だけど、本城さんの。
本城さんの「思い出して」って言葉には、俺と同じくらい苦悩があるような言い方だから。
言いたいけれど必死に我慢しているような。
だから、それでも教えてくれなんて言えない。
素直に、頑張って思い出してやろうと思える。