Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
声を、上げる暇さえ無かった。
いきなり、机の上に指輪を置いて、ドアへと歩いて……
「ちょっと……本城さん!!」
カツンと音をして置かれた指輪を見て、意味が理解できず慌てて本城さんの背中に声を掛けたけれど
遮断するように、ドアを閉められた。
「何だよ……コレ。貰っても……」
こちらを向くことすら無く、後ろ手で閉められたドア。
意味の分からない、指輪を俺にくれて。
彼女の行動に疑問を残して。
その後、退院までの数日間。
もしかしたら今日は来てくれるのでは……?と淡い期待を抱きながら過ごしたけど。
彼女が来てくれる事は、
もう無かった――――