Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





「一人でできるだろ」


「手伝ってくれるって言ったのは誰だよ」


「手伝う必要無さそうだし」


「手伝う気が無さそうだし……」



「チッ」




舌打ちかよ。



こちらを軽く睨みながら変な呻き声をあげつつやっと起き上がる兄貴。




立ち上がって……あろう事か車のキーを手に歩きだす。




帰る気?



「っ、ちょっと!」



手伝うって言ったり泊まるって言ったくせに


手伝ってって言ったら帰るのか?




さすがにそれはないだろ、と思いながらも


もしかしたらこの人ならするかもしれないとも思い声をかける。





と、




「車ん中に忘れ物。ついでに家にも忘れ物したから取りに行ってくるわ」



「……忘れ物?」


「そういう事だから、帰ってくるまでに片付けとけよ」


「はっ?」




顔だけこちらへと振り向いて、笑顔で俺に告げると、そのまま……出ていった。




……結局、俺が片付けるのか。




まぁ、全部俺の物だし、俺が片付けながら物のある場所を覚えていく必要があるから……な。






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