Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―




手を引き抜いて、目の前に現れたそれに、俺は固まってしまった。




「何で……?」




どうして、これが?




こんな所から出てくるんだよ。







……指輪。




これは、本城さんが最後に見舞いに来てくれた時に置いていった指輪。



何でそれがクリーニングの紙袋から出てくるんだよ。



それに……おかしい。


紙袋と指輪を持ったまま、チェストに向かう。

その上には、置きっぱなしになっているスケジュールの書き込まれたノートと、紺のハンカチ。


ハンカチを恐る恐る捲れば、やっぱり。


指輪が姿を現した。




本城さんが置いていった指輪は、きちんと返そうとハンカチに包んで大切に保管している。


なら、どうして……?


俺が記憶を失った日に着ていたスーツと共に出てきた?


この、指輪……。



一つの仮説が浮かぶ。



「俺の指輪、なのか……?」






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