Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





「さて、波音さん。初心デートしますか」



どれだけ涙を流しながらイルミネーションを見上げていたんだろう。


指を絡めた波音の手は、かなり冷たい。


温かい物でも食べに行こうか。




どこに食べに……と考えながら、取り敢えず歩きだそうと手を引くと……動かない波音。



「……涙」


「ん?」


「今日はね……家に帰りたい」


「え?」



どうした、と波音を見れば、波音は意外な事を口にした。


「また……別の日にね?」


せっかくのクリスマス、なのに?



「別にメイクとかなら気にしてないよ?」



波音の事だから、そんな事を気にしているのかと思う。


目は赤いけど、メイク全然平気だし。


それに、俺の為に泣いてくれてこうなった訳で、波音に言ったら怒るかもしれないけど逆に嬉しい……と言うか。


とにかく気にしなくて良いから。


行こう?


だけど、波音は嬉しそうに笑って首を振って。



「家で、ふたりっきりで、ずっと一緒にいたいから」



握った波音の手に、ギュッと力が入った。






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