Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





『涙が危ない目にあった時位、夜中でもいつでも連絡して下さい!』




まだ止まらない涙を流しながら涙声で雅臣さんに訴えると、『ごめんな』と、頭に手を置かれた。




『で、さっきの事だけど……』



そう言われて、思い出す。



涙がどうしてこんなことになったのかは分かった。



でも……



『涙、私の事、覚えてないんですか?』



私に、誰?って聞いてきた。



私の事を全く知らないみたいに。



『波音ちゃんだけじゃないよ。俺らの事もだ。
打ち所が悪かったみたいですっぽり人間関係の過去の記憶が抜け落ちてる』




『人間関係……の』



つまり、今まで付き合ってきた人達が誰なのか、自分とどういう関係なのかも分からないと言う事。



『先生が言うにはそのうちひょっこり戻ったり、だんだんと思い出したりする事が多いんだと。何かのきっかけとかでな?

でも、あくまで自分で思い出させなきゃいけないらしい』


『自分で?』


『なるべく周りが過去の事を話すよりも、自分で思い出す事が大切なんだと。
ある程度思い出してきて聞いてきたら教えてやっても良いらしいけど……』


自分で思い出そうと努力する事が大切らしい。








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