Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
「……本城さん」
「ん?」
涙が顔を上げる。
何かを決めたように、真っ直ぐこっちを見つめて。
「毎日、来なくて良いから」
涙に告げられた、別れと同じような宣告。
「同級生ってだけで、毎日来てもらって。迷惑かけて、ごめん」
「……迷惑なんかじゃ無かったよ」
迷惑なんかじゃ……。
毎日涙に会えて幸せだったもん。
「明日も来れる?」って、帰りぎわにに聞かれるのがすごく嬉しかった。
迷惑なんか、一度も思ったことなんて無いから。
そこは、勘違いしないで。
「たまに……来てくれたら嬉しいな。
まだ後少し、退院まで日があるから。疲れてなくて、時間がある時にでも」
優しく、そう言ってくれる涙に頷く。
でもね?
きっともう、私がここに来ることは無いから。
それに、退院したら私と涙が会うことなんて無いから。
今日がさよなら、だね。
身を退くって決めてたから。
「じゃあ……私帰るね」
立ち上がって、荷物をとる。
「またね」
私を見上げて、言う涙。
もう また は無いんだよ。
だから、最後に少しだけ言いたいことを伝えてもいいよね。