Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





涙は、ベットの横の椅子に座るように促してくれる。



「仕事がまだ残ってて……あ、ごめんね、時間が無くてかすみ草買えなかった……」



花瓶の花は、何日か前にあたしが持ってきたかすみ草。



枯れだしたから、そろそろ買わないとって思ってたんだよね……



「……またかすみ草?」



フッて笑いながら涙もかすみ草を見る。



「やっぱり、こっちの華やかな花の方が良い?」



あたしは、かすみ草の隣に置かれた綺麗な色とりどりの花を指差す。




「いや……本城さんはいつもかすみ草を買ってきてくれるから、俺、そんなにかすみ草が好きだったのかなって思って……」




目を細めてかすみ草を見る姿に、胸が苦しくなる。




「残念。ただあたしが好きなだけですー」




その思いを口や態度に表すことなく、あたしは明るく振る舞う。









< 7 / 162 >

この作品をシェア

pagetop