Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





「指輪、売っちゃえば良かった!」




そしたら、そのお金でヤケ食いしちゃう事もできたのに。



なんであの時涙に返してしまったんだろう……。




涙だって、貰ったって意味が分からず困るだけなのに……。




いっそ売ってお金にしちゃえば良かった。





そんな、本当に寂しい考えをしていた時……。







「……ダメだよ。名前とメッセージ彫ってるから。買い取ってもらえない」





急に私の視界の両端から腕が伸びてきて、私に絡まり。




背中に暖かい感触と、声が聞こえてきた。





「……っ!」





顔だけで振り返ると、目の前には私がずっと望んでいた人物が居て。




「波音……悲しい思いをさせて悪かった」




そう言って、ギュッと力を強めて抱き締めてくれる。




「涙……?」



「何?」




「思い……出したの……?」





涙で視界がぐちゃぐちゃになりながらも、涙に聞く。




今私の目の前に居てくれる事が信じられなくて。





こうして抱き締めてくれている事が信じられなくて。





それに、“波音”って……。










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