Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
あー駄目だ。
諦めて目を開くと苦笑いの兄貴。
『そのうちふとした時にパッと思いだせるって。
酒も入ってる事だし……取り敢えず今は休め。な?』
促されて仕方なくベッドに横になる。
『……兄貴は帰んないの?』
『俺?取り敢えずお前が寝たの確認したらお前の着替え取りに行くわ』
ごめん、と謝れば『気にするな』と言われて。
ゆっくりと目を閉じた。
……次に目を開いた時には、兄貴と、多分両親だろう人。
また涙を流していて、俺はどれだけ迷惑を掛けたのかが良く分かった。
『……大丈夫だから、泣かないでよ』
そう言っても泣かれて、困り果てていた時。
コンコン、
軽いノックが室内に響き、兄貴が返事をすればドアがレールを滑る音がした。
『涙っ!』
『波音ちゃん……!』
高い声が聞こえる。
足音がして、視界に、また知らない女性が入ってきた。
レイコさんとまた違う人。
レイコさんよりも若くて……俺と同じ位に見えた。
涙目で、心配そうに俺を覗き込んでいて。
今にも涙が俺の方に落ちてきそうだった。