Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
『大丈夫!?痛い?』
思い出そうと、じっと女性の方を見ていると、聞かれる。
『……頭痛い。体も、あちこちが』
動かそうと思えば痛い。
顔を歪めながら答えれば、
『仕方ないな。頭から落ちたらしいから。検査して命に別状は無いから安心しろって先生が』
兄貴も俺を見下ろしながら、今来た女性に簡単に説明した。
『……良かった…っ!』
兄貴を見上げて安堵の笑みを見せる。
と同時に瞳からポロッと涙が零れた。
『でもな……波音ちゃん』
安心したように息を吐き出す女性に、兄貴はまだ言っていない大事な事を言おうとする。
記憶、の事。
兄貴の顔を見ていたら悲痛な表情で。
俺から、聞こう。
そう思い、俺の手のすぐそばに置かれた彼女の手に、自分の手を重ねてみた。
ひんやりとした指先。
きっと、外が寒かったんじゃないか。
俺の安否を心配して……。
少しでも熱を移してあげようとキュッと握れば、指先がピクッと反応して兄貴を見上げていた目を俺に向けた。
視線が絡んだ瞬間、彼女の指先に力が入った。
君は……?
『……あなた、誰ですか?』
誰……?