Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―
……思い出せば、本城さんは喜んでくれる。
悲しい顔をさせたくない。
早く思い出したい。
本城さんと一緒にいたら、どんどん思い出せるような気がする。
ふんわりとした独特の空気に包まれて、俺は本城さんといたら安心する、って思った。
「……それはそのままで大丈夫です」
「そう?それじゃあこれだけ替えてくるわね」
レイコさんは少し大変そうに花と花瓶を持って部屋を出ていく。
……良かった。
レイコさんに、どうして枯れてるのに捨てようとしないのか深く聞かれなくて。
『良かったな。……まだ、頑張って咲いてろよ?』
かすみ草に、呟く。
俺は知ってる。
殆ど枯れている中、僅かに咲き誇っていた一部のかすみ草に
本城さんが微笑みかけながら『頑張って』と小声で話し掛けている事を。
まだ頑張って咲いてるから。
頑張って咲いてくれているのに、殆ど枯れたからって捨てるのは可哀相だ、と。
さりげない所での優しさを感じる。
あのレイコさんが持っていった花も、まだ頑張って咲いてるものがあった。
……まだ咲いてるのは残しておいて下さいって言えば良かったな。