Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―




難しくて分からない問題の解き方の順序が分かった時のように。


閃いて鮮明になる。


コレを、きっと思い出したって言うんだ。


本当に蜜柑が送られてきていたのか、確かな事は分からない。


だけど、きっとそう。


少し、思い出した……。


ふとした時に思い出すと言った医者の言葉が分かったような気がする。



少しだけど、思い出せた……!



不思議な感覚と喜びが同時に湧いてくる。



「どうしたの、城戸君?」



固まっていた俺を覗き込むレイコさん。



「あ、嫌……。さすがに満腹になってきたなぁって」


「だから食べ過ぎだって言ったでしょう?本当にお腹壊すわよ?」



可愛らしい怒った表情を作りながら俺の剥いた皮も一緒にごみ箱へと捨てて片付けてくれる。






「じゃ、そろそろ私は帰るわね?また明日来るから」


「あ、はい」




笑顔で帰っていくレイコさん。



……この、静寂が俺は嫌いだ。




案外記憶を無くす前も寂しがり屋だったのかもしれない。






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