Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―





一人じゃなくて、誰かと一緒にいて会話をして楽しかった時間が終わって、静かになる。


何とも言えない気持ちになるんだ。

そして思い出せない昔の自分と向かい合わないといけない時間になる。


「何で……」


どうして、さっきレイコさんに。

少しだけど、どうでも良い事かもしれないけれど思い出した事を伝えなかったのだろう。


頭を打って、自分のせいで怪我をして記憶を失っていると責任を感じているのに。


少しでも思い出した事を伝えればきっと一緒に喜んで貰えるはずなのに。


何故か。


思い出してすぐ、本城さんの顔が浮かんだんだ。


真っ先にこの事を本城さんに教えてあげたい、と思った。



笑ってくれるか。


喜んでくれるか。


何て言ってくれるか。


すぐ目の前に伝える事が出来る人がいると言うのに。



本城さんに、今すぐ伝えたいと思った。



「早く来ないか……」


早く教えたい。


また今日もきっといつものように面会終了時間ギリギリにやってくるんだろうな。






< 94 / 162 >

この作品をシェア

pagetop