Engagement Ring―かすみ草―×―ひまわり―




それを受け取って少し眺めた後、机の上の蜜柑を手に取った。



「これ」


蜜柑。


「蜜柑?」


「ん。俺、昔も好きだったよね?冬場になるとばあちゃん家から届いてさ。めっちゃ食ってた場面、思い出して」



断片的だけど、立派な俺の過去だろ?


「お祖母さんの家……どこにあるか思い出したの!?」



驚いたような声での本城さんの質問。


ばあちゃんの家……分かる。



「和歌山」


きっとそう。


断言できた。



ばあちゃんの顔は、正直覚えてないけど、和歌山だ。








……返事の無い、本城さん。



「ねぇ、その、蜜柑を沢山食べてる場面が頭の中に浮かんだんだよね?」


正解だよな。そう思っていれば、新たな質問。



「蜜柑食べてたらひらめく感じでパーっとね」


そう。



いきなり、本当にいきなり。




思い出そうなんて全く思っていないタイミングで浮かんできた。




意識しない方が、あっさりと記憶は出てきてくれるのかもしれない。




「食べてた場所は!?どこで城戸くんは蜜柑を食べてたの!?」





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