Winter bell
家を出た瞬間、あたしは目を見開いてしまった。


玄関の前に、一本の真っ赤なバラが置いてあったから…。


バラの茎には白いリボンが結ばれていて、その下からは小さなカードが姿を覗かせている。


頭で考えるよりも先に、バラとカードを手に取った。


《下を見ろ》


カードに添えられていたメッセージは、そのたった一言だけ。


下……?


不思議に思いながらも、見覚えのある字に胸の奥がキュッと熱くなる。


唇を噛み締めて込み上げて来る涙を堪え、深呼吸をした。


そして…


廊下の壁から体を乗り出すようにして、ゆっくりと下を覗いた。


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