Winter bell
「晴稀……」


アパートの下を見ると、優しく微笑んでいる晴稀がこっちを見て立っていた。


彼の姿を確認したあたしは、すぐに階段を駆け降りた。


意地っ張りな性格も、可愛いげの無い言葉も、素直になれない自分も…


もう、全部捨てた。


「晴稀っ!!」


ただ必死に晴稀の元へと走り、彼に抱き着いた。


メイクも髪もグチャグチャで、みっともないけど…


あたしには、そんな物は必要無い。


あたしが欲しい物は、今この腕の中にあるから…。


「ごめ……っ……」


涙混じりの言葉やったけど、晴稀には伝わったやんね……?


あたしを抱き締めてくれた晴稀の腕が、そう言ってくれた気がしたから…。


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