Winter bell
伝票を持った晴稀が、何かを思い出したかのように作り笑顔を浮かべた。


「俺、山本さんみたいな裏表のある女は嫌いやから!」


「なっ……!?」


山本さんは顔を真っ赤にして、唇を噛み締めた。


晴稀はそんな彼女をチラッと見た後、あたしに優しい笑みを向けてから歩き出した。


カフェを出てすぐ、あたしは彼の前に立った。


「あたしと別れるつもりやったんじゃないん?」


眉を下げたあたしに、晴稀がフッと笑った。


「俺、別れるなんて言うてへんけど?」


「え……?」


「俺の想いは、そんな簡単なもんちゃうからな!」


晴稀はそう言って優しい笑みを見せると、また歩き出した。


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