Winter bell
駅に着いた直後、あたしは改札口の前でしゃがみ込んだ。


「気持ち悪い……」


怒りに任せて飲んでいたから、お酒の量をセーブ出来ずに飲み過ぎたみたい。


「大丈夫か……?」


「うん……。たぶん……」


そう答えたけど、ここからだと家まで30分は掛かる。


困り果てた様子の晴稀は、ため息をついて口を開いた。


「うちまで我慢出来るか?」


「え……?」


「我慢出来るんやったら、タクシーでうちに来るか?」


「うん……。でも……晴稀はイイの?」


あたしは込み上げて来る嬉しさを隠しながら、晴稀の目を真っ直ぐ見つめた。


彼は小さく頷いた後、あたしの手を引いてタクシー乗り場に向かった。


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