Winter bell
晴稀の家までは、車で10分以内。


あたしは車に揺られながら、気持ち悪さに耐えていた。


晴稀の家に泊まれる!


そう思うと、辛い気分も少しずつ引いていく気がする。


晴稀の横顔をチラッと見た後、彼の肩に寄り掛かってそっと目を閉じた。


溢れて来る愛おしさがさっきまでの憂鬱を掻き消してくれて、心がゆっくりと穏やかになっていく。


「羅夢、着いたで……」


晴稀はウトウトしていたあたしを優しく促し、タクシーを降りた。


「大丈夫か?」


「うん……」


「ほら……。もうちょっとやから、頑張れ」


晴稀は足元が覚束ないあたしの肩に手を回し、体を支えるようにして歩いてくれた。


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