Winter bell
泣きながら目を覚ましたあたしは、突き付けられた現実にまた涙が零れた。


夢やったんや……


涙で濡れた頬が冷たい。


仕事……


頬の涙を手で拭って、重い体を引きずりながらベッドから降りた。


頭が痛くて、メイクのノリが悪いけど…


もう、何もかもどうでもいい。


晴稀の為に可愛くなりたかった。


だけど…


今はどんなに可愛く着飾っても、晴稀がいない。


オシャレをする事に、意味を感じない。


こんな事は初めてだった。


ずっとオシャレや恋にしか興味が無かったのに、今はすごく虚しい。


「行ってきます……」


誰に言った訳でも無い言葉を部屋に残して、重い足取りで家を出た。


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